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「練り切り」と「こなし」の違い
いろいろな種類の上生菓子の中で、同じような見た目にもかかわらず「練り切り」或いは「こなし」と呼ばれるお菓子がございます。
実はこの二つの名称は厳密に区別されているわけではありません。
両方を「こなし」と呼んだり、上生菓子の事をまとめて「練り切り」と呼ばれる方もいらっしゃいます。
こういった複雑な関係の原因は、同じ「練り切り」「こなし」の中にも数種類の材料のパターンと製法があり、「この材料を使っているから◯◯」などと、はっきりとした区別ができない為です。
製菓業界の用語としましては、
○練り切り…白漉し餡に求肥等のつなぎを混ぜ合わせ、練り上げたもの。
○こなし…白漉し餡に小麦粉等を混ぜ、蒸したものを揉みこなしたもの。
と区別されております。
一般的には、
○練り切り…細工が容易、色味が華やか、さらりとした口どけ
○こなし…ぼってりとした生地、素朴な色味、モチっとした食感
といった印象です。
萬福寺 売茶忌 にて
共通しているのは、上生菓子として成型するために、このような生地を使用するという点です。
通常、表面を覆う生地の内側、中心部分には漉し餡などが入っています。
この漉し餡を口どけがよく水々しい状態でお召し上がり頂くためには、表面には少し粘度のある生地を使う必要がございます。
つまり、形状を保ち、細工を施し、お皿にくっつかない、そのために表面を生地で覆うのです。
「こなし」の方が古くから存在したそうですが、江戸時代末から明治頃に関東で「練り切り」が生まれました。
その経緯から、関西は「こなし」で関東は「練り切り」と対比されることもございますが、現在では全国的に
「練り切り」が主流となっております。
明治以降、上生菓子は茶席のお菓子という側面だけではなく、お商売のお客様のおもてなし用、
お祝いやお正月のハレのお菓子として一般の方がお召し上がるになる事も多くございました。
より華やかで、煌びやかな菓子が支持される、そんな時代背景に後押しされ、成型が容易で細工がしやすい
「練り切り」が多く使われるようになったのではないでしょうか。
<><>写真の説明<><>
練り切りで製作された[切梅]
練り切りの生地は薄く伸ばしやすいため、表面に白、内側に赤、
その中に漉し餡という3層構造で製作することができます。
全体は表面の白色に透ける赤色で、ピンクのような色味になり、
切り込みを入れた箇所は2層目の赤を強調することができます。
このお菓子についての内容は 金谷亘さん(京菓子司 金谷正廣)にご協力を頂きました。
2020年4月18日(1)